進捗雑記

#平原
一話目四回目の推敲10234字 まだもう少し膨らませる必要があるなあ…。冒頭はほぼOK、中盤とラストはもうちょっと書き込みたい

冒頭記録
 普段より足音が荒いのは、抑えきれない苛立ちのせいだ。
 テリオンは舌打ちしながらそっと外套に手を入れ、背中を触る。そこに、いつもは存在しないはずの荷物――一冊の本があった。
(まったく、余計なものを押し付けてくれたな)
 分厚く重い本は、ノーブルコートのオルリックの屋敷で学者から受け取ったものだ。レイヴァース家に行くならついでに渡してくれ、と託された。あの時の学者のあっけらかんとした顔を思い浮かべると、腹の底がむかむかする。だが今のテリオンの立場上、依頼を断ることはできなかった。
 北ボルダーフォール崖道の乾いた上り坂を踏みしめ、やがて頂点にたどりつく。胸がすくような青空が目の前に開けた。振り返ればずいぶん小さくなったウッドランドの森が見える。目的地のレイヴァース家には急げば今日中にも到着できそうだが――
「おーい、待てよテリオン!」
 薬屋のうるさい声が背中を叩く。テリオンは仕方なく立ち止まった。薬屋はとさかのような髪を揺らして横に並び、息を整える。
「そろそろ休憩しねえか。トレサが限界だってよ」
 知るか、と吐き捨てて先に進みたいところだが、それは学者との「例の取引」により不可能である。テリオンは黙って地面に自分の荷物をおろし、その上に座った。
 それを了承と受け取ったのか、薬屋は「一緒に見といてくれ」と言って、背負っていた荷物をその場に置き、坂を引き返していく。テリオンはその大きな袋をじろりと眺めた。薬屋は荷物が盗まれるとは微塵も考えていないのだろう。「旅の連れが見ているから」というだけではない。何故ならあの袋の中身は――
 テリオンが背中の本の位置を手で微調整していると、ぜえはあという荒い呼吸音が近づいてきた。
畳む