進捗雑記

#落花
一話目四回目の推敲13604字
めちゃくちゃ直すのに時間がかかった…もう推敲終盤のはずが…!?あれ?


 聖火が灯る瞬間をテメノスが見るのは、もう四度目だ。
 フレイムチャーチ、トト・ハハ島、ク国、そしてこのクラックレッジ。教会関係者などから入手した情報をもとに、ソリスティア大陸のあちこちに隠された聖火台を見つけ出した一行は、アルパテスに託された鏡で火を灯して回った。
「これで空が明るくなるんだよね?」
 カル遺跡の最奥にゆらめく炎を見つめながら、獣人オーシュットが誰ともなしに質問する。灯すべき聖火はここで最後だ。しかし答えを持つ仲間はいなかった。
「待って。鏡、映ってるよ」
 気詰まりな沈黙を破ったのはソローネだ。彼女は聖火台の前に立つオズバルドの手元を指さした。仲間たちがはっとして視線を集中させる。
「パルテティオ」
 鏡面に何かを認めた学者が厳かに商人の名を呼ぶ。パルテティオはそわそわした様子で鏡を覗き込んだ。
 テメノスは後方から、少し苦い気分で彼らの反応をうかがう。
(まさか、あの鏡に過去の景色が映るとは……)
 一行がそれに気づいたのは、この間静かの洞窟で聖火を灯した時だ。もしかするとフレイムチャーチやトト・ハハ島でも同じ現象があったのかもしれないが、その時は復活した炎に気を取られて誰も鏡に目をとめなかった。
 鏡が映し出すのは、その場所の聖火が消えた時の光景だ。炎に宿る記憶というべきか。当然だが鏡に景色が流れるだけで、音は一切聞こえなかった。
 テメノスがいる位置からは鏡がほとんど見えないので、仲間の様子から内容を想像するしかない。オズバルドは落ち着いて、パルテティオは固唾をのんで鏡を見つめている。その背中をヒカリがじっと眺めていた。かの剣士は静かの洞窟で鏡を見た時、珍しく動揺をあらわにしたものだ。
 やがて鏡から放たれる光が収まった。パルテティオががくりと肩を落とす。
「オリ……」
 彼はぼそっとつぶやく。
「ど、どうだった……?」
 アグネアが眉を下げて尋ねた。
「あの新聞記者がナイフで自傷し、聖火を消した。黒い表紙の本を持っていたな」
 オズバルドが眼鏡の奥の目をすがめながら答えた。テメノスはあごを指でつまむ。
「やはり、聖火を消すには何らかの犠牲が必要なようですね」
 静かの洞窟で鏡に映った光景でも、何人かが命を落としていたという。この仮説を他の場所に適用するなら、おそらくフレイムチャーチではジゼル座の演出家タンジーが生贄になったのだろう。幸いというべきか、トト・ハハ島だけは犠牲者に心当たりがなかった。
「あのオリって子、生きてるよね。なのに聖火が消えたんだ」ソローネが首をかしげる。
「生きててくれてよかった……よね」
 アグネアはしゅんとして語尾をすぼませた。

全然予告編と違う話の展開になってる。一話目めっちゃ暗いですが、一応ラストは割と明るくなります…2の原作沿いで徹頭徹尾明るい話書くのってもう無理でしょ…畳む


ヒカリの五章の展開を「簒奪」と書くことに若干の抵抗がある。いややっていることは完全に謀反だし簒奪なんだけど、原作だとその側面は強調されてなかったから…。前王を殺すし城下町を焼くし遺言を無視したとはいえ、ムゲンは一応王位継承者第一位ですからね。やっぱり別の書き方をするのがいいな。