#落花 四話目8157字+五話目7896字(二回目の推敲) 四話目が長くなりすぎたので分割しました。それに伴って話の切れ目がイマイチになったからちょっと工夫しないといけないかな。もう永遠に推敲終わらないかと思った…。でも作業通話のおかげでだいぶ進んだ、六話目は明日がんばります!四話目冒頭、テメノスとロイの捏造回想シーン続きを読む テメノスは真っ暗な空間にいた。 ぴんと張り詰めた水盤が足元に広がっている。水面にぼんやり映るのは月だろうか、この空間で唯一の光源が丸く輝いている。「教皇はここを『心の暗がり』と呼んでいたよ」 幼なじみのロイの声が響く。テメノスは周囲に散らしていた視線を正面の彼に戻した。「暗がり……?」 水盤には神官服を着た自分の姿が映っている。身じろぎすると、波紋が出て像が揺れた。「審問では後ろ暗い思いが相手に筒抜けになるから、そう名付けたらしい。単純にここが暗い場所だということもあるだろうけどね」 異端審問官に任命されたばかりのロイに「審問の力を試してみたい」と頼まれたのがつい先ほどのことだ。テメノスは審問という馴染みのない概念に正直胡散くささを感じていたが、ロイが相手なら問題ないだろう、とその申し出を受けた。 二人は大聖堂のロイの部屋で向かい合っていた。幼なじみが断罪の杖を掲げるとその先端が光り、気づけば彼らはここにいた。「では今、君は私の考えていることが分かると……?」 わずかに緊張が走り、テメノスの顔がこわばる。ロイは笑った。「全部ではないよ。より心の深いところに踏み込むには、ここで戦ったりして相手を弱らせる必要があるらしい」「物騒な話だな」 テメノスは肩をすくめる。正直、そんな役割がお人好しのロイに向いているとは思えなかった。誰でも信じてしまう彼には荷が重いだろう。教皇も人選を誤ったのではないか、と言ってやりたかった。「いや、この仕事は僕に向いているよ」 ロイは唐突に答えた。テメノスはぎょっとする。声に出さなかったはずの思いがロイに伝わっている。審問の効果は本物らしいことを悟り、テメノスは苦い気分になる。「……落ち着かないな、これは」「そうだね。僕もちょっと変な感じだ」 ロイはほほえんで水盤に杖をつく。そこから波紋のように光の輪が広がって、思わず目を閉じた。 ――まぶたを開けると、ロイの部屋に戻っていた。昔はテメノスと同じ空間で暮らしてが、成長して神官としての位階が上がり、別の部屋になったのだ。 ロイは断罪の杖をまじましと見てから、破顔した。「やっぱり、どれだけ仲が良くても隠したい気持ちはあるよね。うーん、知り合いを審問するのは避けた方がよさそうだなあ」「当たり前だろう」とテメノスは呆れて目をすがめる。「でも、良かったこともあるよ」 そこでロイは笑い、いたずらっぽく視線を流した。短い髪が揺れる。「テメノスが僕のことを心配してるって分かったから」「別に、心配なんて……」 図星だったテメノスは目をそむけてぼそぼそと反論する。ロイは食い下がり、視線の先に回り込んできて言った。「僕だって、何もかもを信じているわけじゃないよ。テメノスは逆に他人を疑いすぎだ。僕や教皇のことは信じていてくれているのに」「……それは、まあ」 テメノスは言葉を濁した。気恥ずかしいが、その二人に関しては認めざるを得ない。ロイは口の端に微笑を浮かべる。神官にふさわしい穏やかな表情だ。「その気持ちを、もっといろんな人に広げていけるといいね」 別にロイたちがいれば他なんて必要ないだろうと思ったが、テメノスは口に出さなかった。すると、審問はすでに終わったにもかかわらず、ロイはその気持ちを受け取ったかのように目を細める。 ロイがそう断言できるのは、無邪気に神を信じているからだろう。テメノスが信じられるのは、今目の前にいる人だけだった。畳む 進捗 2024/12/07(Sat)
四話目冒頭、テメノスとロイの捏造回想シーン
畳む